【散文気分】 - 2020/6/7 Sun -

二人で選んだ谷筋へと至る住宅街への入り口には、店頭にも生鮮食品を賑やかに並べている小さなスーパーがあった。 特に急ぐ必然もない二人なので店頭のそんな在りようにも意識が向けられていた。 谷川にとってはあまり関心のない価格であったが、中サイズのズッキーニが一本99円に対して谷川の娘は少し興奮気味に食い付いていた。 彼女はそれを一本手に取り意気揚々と店内へと入って行った。 谷川もゆっくりとそれに追随していた。

アウェイの生鮮市場で多くは求められない。 持ち歩く煩わしさもあれば買い求めた物への気遣いも働く。 店内をゆっくりと見て回ったあげくに谷川の娘はズッキーニだけを会計し、谷川はそんな合い間に紅茶のシフォンケーキがホールのハーフサイズで安く売られていた物を買い求めていた。

谷筋の静かな住宅街は二人が予想していた通りに日陰が多かった。 通行する車も人も少なかった。 なので時折りすれ違う年配者や犬を連れた人たちとは軽く会釈を交わして歩いた。 谷川はとっくに開封していたシフォンケーキにかぶり付きながら歩いていたが、彼の娘はそれには無反応だった。 駐車された車の脇にたたずむ茶トラの猫をあやしたりしながらも、ゆっくりと歩き進んでゆく。 しびれを切らせて谷川が勧めると、『いまお腹いっぱいだから』と笑って娘はそれを断った。 そんな段階になって谷川はやっと振り返る。 6個入りのたこ焼きを二皿(2種類)注文していたうち、谷川が手を出したのは たかだか二つ程度だった。 それはお腹いっぱいなハズだった。 なので谷川は表情を変えず、シフォンケーキのことは何も言わずに残りも一人で頬張り続けていた。 もちろん娘の【別腹】を意識して用意した物ではあったが、そんなことは既にどうでも良かった。

やがて西日の射し込む方向に緑が伺えるようになってきた。 どうやら公園の端らしかった。 谷川の娘は彼にトイレ利用を告げていた。 公園への入り口は二か所に見えていた。 そしてお互いに『こっちから』などと主張し合いながらも、結局は自分で言う通りに少し奥の方から彼女は入って行った。 それに追随することなく手前から入っていた谷川が実際トイレの方へ近付いてみると、特にどちら側からでも大差はなかったようだ。

子供らの遊ぶ園内の木陰で谷川は娘を待つ間に適当な樹木を見上げながら ゆっくりと歩いた。 シフォンケーキはとっくに食べ終えていたが、ふわふわなので無理する必要にも迫られずに助かっていた。 普段ならば決して食することのない そんなアイテムを、そんなカタチで完食していたことに気付いて彼は一人で笑い、そしてまたぼんやりと娘を待っていた。 金網のフェンスの向こう側は小さな野球場のようだったが、入り口には現状に配慮する主旨と当分の間は立ち入りを制限する文面が掲げられ、その上でロープが張られている。 広く明るく、周囲には子供らの声が響いていて割と賑やかなのだが そこだけは人の居ない、まるで時の流れから隔絶されている場所のようにも感じられていた。

遊歩道の端に座り込むかを少し迷っていると谷川の娘が戻って来た。 『今なに見てたの』

 《続く…》

6.Jun.2020 藤沢市・遠藤地区   元・分譲?農地の放置モノかと。

アスパラの花でしょうか。 茎なんかもご立派なモノでして。

この日は昼下がりにゆっくりと4時間ほどかけて15kmほど歩いてみたのですが。
歩くことそのものは何も問題なくとも、何だか色々と考えてしまうんですよね。 その度に【断ち切る】作業が忙しい、そんな散歩でもありました。 どうやらそろそろ。

夜は早めにスパッと眠れたのが良かったです。 心地よい疲れの有難味かと。

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