【散文気分】 - 2017/12/15 Fri -

ヤンデルとグレーテル


あるところにヒトからもらった名前で生きている者がいました。

  『キミは病んでいるな。 今日からヤンデルとして生きてゆくことだね』

それからというもの。 その者はヤンデルとして生きてゆくことを決意して、そして生きてゆくのでした。 でも。 物事はそう簡単には進みませんでした。 ことあるごとに、(自分はヤンデルとして生きていていいのだろうか?) と考え、そして悩み続けてもいました。

その一方で。 明かないい面もちゃんとありました。
ヤンデルとして生きていることは、そうする前から比べると少し・・・ いいえ。 とても楽になったこともあるからです。 そう感じられるのは、きっとヒトから【ヤンデル】などという名前をもらうキッカケとなった、それまでの自分の様々な経験を振り返りやすく感じられていたからなのかもしれません。

そんな風にして月日が経つに連れて、その者は次第に自分自身への疑惑を持つようにもなっていました。

  『もしかしたら。 自分はこの世に生まれた時から、もうヤンデルとして呼ばれるよう、
  定められていた存在なのじゃないか?』

けれども。 そのことが一体なにを意味するのかについては。 ヤンデルは不思議とあまり深く考えたりはしませんでした。 本当の部分はワカリマセン。 でも、きっとヤンデルなりには、そんな疑惑の先に存在する暗闇のような気配を感じ取っていたのかもしれません。

ヤンデルは臆病なので、その名前をもらう前から暗闇には敏感でした。
なので他人の暗闇にも敏感に反応します。 なんとか救って差し上げたい、などといった思いに駆られてしまうのです。 そして。 それを追求した大抵の場合には、良くない結果としかなりませんでした。 そしていつでも、暗闇に対する脅威を増してゆくのみでした。


またあるところに。
やはりヒトからもらった(一時的な)名前で生きている者がいました。

  ※【グレーテル】 については。 どうぞみなさんで ご自由に想像(創作)してみて下さい。


さて。 ある街の小さな料理店で。
ヤンデルは料理を注文してワインを飲んでいました。 ヤンデルは白いワインが好みです。

そこへグレーテルがやってきて、自分の座るべき席をきょろきょろと見渡しながら、やがてヤンデルの隣の席に座りました。

とても残念なことですが。
ヤンデルは一目見てグレーテルを嫌いました。 もっと詳しくいうならば、グレーテルのような雰囲気を持ったヒトたちがとても大嫌いだったのだ・・・ということになります。

いつものヤンデルならば、きっと目線を合わさぬように振る舞うとか、姿勢を変えるなどとしていたことなのでしょう。 特別な平和主義者ではありませんでしたが、ヒトとの争い事は嫌いなヒトたちを嫌うことよりも大嫌いだったからです。

その時のヤンデルはグレーテルが何を嫌って、どうすればそこから居なくなるかを知り尽くしてしまっていました。 なぜヤンデルがそんな風に判ってしまったのかは。 今では全く解りません。 そのうちグレーテルも注文を済ませていました。

ヤンデルは見るともなく見るような視線をグレーテルの方に送り続けては、その気配にグレーテルが気付いた途端に薄笑いを浮かべて目線を外し、そしてワインを口に運んでいました。 繰り返し何度となくそのようにしていました。

やがて無言で立ち上がったグレーテルは、ヤンデルの真上から目線を降ろしながら静かな声でゆっくりと言いました。

  『何なんだよお前』

ヤンデルはその言葉には構わずひと口だけワインをすすってから、やがて座ったままゆっくりとグレーテルの方へ向き直りました。 そして何も言わず薄笑いを浮かべてグレーテルをハッキリと見上げていました。

グレーテルはヤンデルの右の頬を拳で打ちました。
 ヤンデルには何も変化がありません。

グレーテルはヤンデルの、今度は左の頬も拳で打ちました。
 ヤンデルは。 今度は薄笑いを浮かべて見せました。

グレーテルは再びヤンデルの右の頬を打ちました。
 でも、ヤンデルにはやはり何も変化がありませんでした。

グレーテルは無言のまま静かに料理店を出て行ってしまいました。


ヤンデルは何もなかったかのようにすくっと立ち上がり、周囲で食事をしていたお客さんたちに『お騒がせしてすみませんでした』と言って、頭を下げて謝りました。 それから厨房に繋がる配膳カウンターのところへ出向いて、『このまま食事を続けてもいいでしょうか?』と尋ねました。 その時には、それは困ると断られることをむしろ望んでいたのだと思います。 でも、料理店の配膳係は『構いません』と言ってくれたのでした。 注文していた料理が運ばれるとヤンデルは美味しく戴いてから会計を済ませ、もう一度謝ってから店を出ました。






10.Dec.2017 藤沢市 自宅隣家の庭先にて。

お。 散文気分が【創作】を手掛けたか? ・・・などと思わせてしまい スミマセン。
本当そーゆー場合には、きっとタテ書きしてますょ。えぇ。

気の毒に思う気持ちは確かにあります。 ありますけど。 まぁ。 【悪い犬・系】の解決方法で、きっと自己解決していることでせう。 ヤンデルに比べればグレーテルなんて・・・とは思いませぬ。 そーゆー部分にはこだわりがありますだ。 それはそれでお互い様よと。

P.S.

発破は ドーンっ!
・・・失礼を。 葉っぱは ブルーベリーです。

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